正義の味方







こんにちわ。僕の名前はバイキンマンです。
今まで僕は、町の人たちに数々の悪さをしてきました。

だけど、本当はそんなことしたくなかったのです。
本当の僕は人と争うことが嫌いな小心者なんです。
おまけに生まれつき体も丈夫ではありません。

現在はストレスなどが原因で精神科にも通ってます。
そのときの診察ではお医者さんから
「あなたは鬱病ですね。もっと明るく生きなければいけません」
と言われ、現在は精神安定剤を服用しています。

ああ・・・僕はただごく普通の生活を送りたいのです。
そして願わくば健康な体になりたい。

ですが、あのお方は許してくれません。

僕に悪いことをしろと命令します。
いつもいつも良心の呵責に悩みながら従います。
あのお方には決して逆らうことが出来ません。

・・・あ。そろそろあのお方からの連絡が来る時間です。

プルルルルルプルルルプルル



時間ぴったりに電話が鳴りました。
僕は電話に出ると緊張した声で
「は、はい。バイキンマンです。アンパンマン様でしょうか?」
「ふ・・・そうだ。俺だ。これから町を襲え」
「あの・・・今日は体調が悪く・・どうかお許しください」
「俺の命令を聞けねーのか?」
「い、いえ。そんな、そんなつもりはありません。」

あのお方からの・・いやアンパンマンからの電話が切れる。

アンパンマンはこの町では悪いやつをやっつける正義のヒーロー。
だけどそれは表向きだ。
本当のあいつの正体をみんなは知らない。

アンパンマンは凶悪な男だ。
現に、僕の愛するドキンちゃんは、僕のドキンちゃんは
あいつの親友である食パンマンに騙された。
そして今は外国に売られたらしい。
宇宙にロケットが飛ぶ時代にも忌まわしき人身売買は存在する。

僕は許せなかった。だけどどうしようもなかった。
なぜなら・・・
僕の両親、そして仲間のカビルンルンたちが人質に取られてるからだ。

僕は週に一度は町を襲う。
そして適当に暴れたところでアンパンマンが登場。
僕はアンパンマンにやっつけられる。
するとあいつは町のヒーローだ。
ちくしょう。こんな理不尽なことってあるのだろうか?

また病院に行く途中に、
「バイキンマンだーあっち行け!」
と子供によく石を投げられることもある。

どうして僕ばっかりがこんな目に・・
もうこの世からさよならをしようかな・・・
そうすればこんなに苦しむこともないし。
いや、弱音を吐いてても仕方ない。
僕は両親を、仲間たちを見捨てることはできない・・
とにかく町にでて暴れるためにUFOに乗ろう。


場所は変わって、ここはジャム工場。

「アンパンマン様。ご機嫌はいかがでしょうか?」
精一杯の作り笑顔を作りつつジャムおじさんは話しかけた。

「お・・じじいか。ちょうどいいとこに来たな」
タバコを吸っていたアンパンマンは、ニヤリと怪しく笑う。
ドキっと嫌な予感をしつつ
「あ、あの何か御用でしょうか?」
ジャムは尋ねた。
「ああ。どうも朝からムシャクシャしてよ。4,5発殴らせろ」
「そ、そんな・・・お助けを・・」
「心配するなって。命まではとらねえよ!?」

まるでジャイアンのような命令をするアンパンマン。
涙を流しながら許しをこう老人を見ても、アンパンマンは容赦しない。

このジャム工場では毎日、ドメスティックバイオレンスが繰り広げられていた。
そしてもう初老を迎えるジャムは
小学5年生の駄目小学生のび太の心境であった。

「ちっ!やはりじじいではつまらねえ・・まぁいい。そろそろ時間だよな。
今日もバイキン野郎を退治するか。
うひょひょ。まったく笑いが止まらんねえよ。
趣味の弱いものいじめをしつつ、正義のヒーロー様として崇められるのだからな。」

そういうとアンパンマンは町に向かって飛び立った。




町ではバイキンマンが暴れていた。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい」
謝りながらも町を攻撃するバイキンマン。
その目には涙が流れていた。

「やめるんだバイキンマン!」
お決まりの台詞とともにアンパンマンが到着。
そしていつものようにバイキンマンをやっつける・・・・・はずだった。
しかし、今回はいつもと違った。

突然雨が降り出したのだ。
「ち・・・顔が濡れてしまう・・」
アンパンマンはとまどる。
それもそのはず
顔が濡れると力が抜けてしまう弱点をもっているのだ。
そしてこのときも力が抜け、ふらふらになっていた。

「アンパンマン・・・僕は僕はもうこんなことはたくさんだ!
お前なんて、お前なんて消えちゃえ!」
そう叫ぶとアンパンマンに攻撃を加える。

「て、てめえ・・・裏切るのか?」
「裏切る?何を言ってるんだ。僕に何をしたか忘れたのか?」
バイキンマンの攻撃で吹っ飛ぶアンパンマン。

そんなときにタイミングよく、ジャムの運転するアンパンマン号が登場する。

「助かったぜ。じじい!早く俺の新しい顔をくれ!
ぐははは。バイキン野郎。ぶっ殺してやるぜ」
安堵の表情を浮かべながら助けを求める。
するとジャムは勢いよくアンパンマンに向かって投げつけた。
だが・・・投げつけたのは新しい顔ではなかった。

「な・・・なんだと!?手榴弾?ふ、ふざけるんじゃねーぞ?」
ジャムは爆弾を投げつけたのだ。

「もう貴様にはついていけんのじゃ」

ドゥン!!
爆発が起こる・・・

「やった!」
バイキンマンとジャムの声が重なる。
思わず2人は顔を見合わせ笑い合う

「やったな。バイキンマン。とうとうアンパンマンをやっつけたのじゃ!」
「はい。ジャムおじさん。これで・・・これできっと平和が訪れますね。」
喜び合う二人。
だが・・・
アンパンマンの死骸が見当たらない。

まさか・・・まさかアンパンマンがまだ生きてるのか?
イヤな予感が2人を襲う。


「やってくれたな。貴様等・・・」
鬼のような形相でアンパンマンが2人の後ろに仁王立ちしていた。

「ど・・どうして?あのタイミングで避けれるはずがないのに・・・」
愕然とするジャム。
またなぜか濡れたはずの顔も、いつの間にか新しい顔になっていた。

「そ、それに顔も新しくなっている。どうしてなんだ?」
怯えながらバイキンマンが尋ねた。
アンパンマンは「くい」っと後ろを指差すと
そこにはチーズがいた。
そう、新しい顔はチーズが届けたのだった。

「く・・・畜生のせいで。こんなことならさっさと保健所に連れて行くべきだったわい。」


心の底から後悔するジャム。

「さぁて。てめえら。言い残すことはねーか?これが遺言になるだろうからな。ひゃはは」
そう言うと懐から拳銃をとりだすアンパンマン。2人に銃口を向ける。
「・・・わしたちは運がなかった。
じゃが、じゃがな因果応報という言葉のとおり、お主を倒す勇者が現れるはずじゃ。
わしはそう信じておる。」
そういうとジャムは目を閉じた。

「僕はこれまでお前のせいで生き地獄を味わってきた。
我が魂魄、百万回生まれ変わっても恨みはらすからな」
そう叫ぶと、バイキンマンも目を閉じる。

「けーっけっけ。なかなか愉快な遺言だったな。あばよ」
そして人差し指に力を込めるアンパンマン。

2人はもう諦めていた。
だが、そのときアンパンマンに変化が起きた。

「な・・・あ、頭が、頭が割れるようだ・・・い、痛え・・・」
急に苦しみだすアンパンマン。

「どうしたのだろう?」
そう思っていると、アンパンマンの顔が醜く崩れる。

「ぐわぁぁああ・・・・な、なんだ!?あびょばびぶ・・・・・・・ばぐはぁ!!?」

そしてアンパンマンは沈黙した。

「そうか!そういうことじゃったのか」
納得するジャム。だがバイキンマンはまったく状況を掴めてない。
「ジャムおじさん。いったいどういうことですか?」

「簡単なことじゃよ。つまりな、チーズの投げた顔は、腐っていたのじゃよ。」




こうしてアンパンマンを倒した。
だが、まだ食パンマン、カレーパンマンという修羅が控えている。
まだまだ2人の戦いは終わらない。





ちなみにチーズは保健所に連れて行かれた。







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