勇者エビル6




大きな城の中、中は静まり返っており少し不気味な雰囲気をまとっている。
そんな雰囲気には似つかわしくない一人の少女が歩いていた。
年齢は15,6歳くらいだろうか。小柄ですこし顔は引き締まっていないものの
かなりの美人である。
彼女は人間ではなかった。魔族と呼ばれる闇の一族の一人。
彼女の仕事は勇者を育成することである。
しばらくして、少女は大きな扉の前で立ち止まった。

「魔王様。ルユです。」

そう問いかけると、扉の向こうから男の声が返ってきた。
「ルユか・・・入れ」

ギギギギギ・・・と大きな扉が開かれた
扉の向こうにはフードを被った男が少女を待っていた。
男は分厚い本を手にして何やら考え込んでいるようだ。
本の背表紙には「世界征服のすすめ12月号」と書かれている。
どうやら月刊誌のようだ。

ルユ「・・魔王様。またその本を見てたんですか?」
魔王「うむ。。この本によるとな、勇者一人ではなくパーティーがいた方がいいらしい」
ルユ「勇者のパーティーですか。エビルさんの仲間・・でも彼、協調性ないし。無理と思うんですけど。」
魔王「それをなんとかするのがお前の仕事であろう?」
ルユ「は・・はぁ。」
魔王「最低3人はパーティーに必要と思うが・・・どう思う?」
ルユ「あと2人ですね」
魔王「いや、あと一人だ。お前はもう勇者一行の一員だろう?」
ルユ「えぇ?でも私魔族ですよ」
魔王「構わん。」

そして魔王と呼ばれた男はまた視線を本に戻す。
少女は、少しの間困惑していたようだが、
まぁいいか・・と小さく呟くと部屋を後にした。





う・・・・む・・・ん・・・・!?

どこだ?ここは・・
目が覚めた俺は高級そうな部屋の中にいた。
俺が寝ていたのは大きなベッド。
ううむ。なんで俺がこんなところで寝てたんだろう?
確か俺はルユといっしょに妙なナンパ男と昼飯を食べたんだよな。
それから・・・うめえワイン飲んで・・・!!?

そうだ。思い出した。
俺はナンパ男に眠り薬飲まされたんだ。
くそ!やられたぜ・・・
そうか、ここはあの男の部屋ってわけだな。
しっかし、でけえ部屋だな。
やたらと高そうなモンが置いてあるしよ。
どれどれ・・・・よくわかんねえがこの壷も高く売れるんだろうな?
俺が物色していると

「やあ。起きたんだね。」

背後から男の声が。。。
そいつは例のナンパ男だった。

エビル「て、てめえ!!よくも薬飲ませやがったな!」
パナン「あ・・あはは。バレちゃった?」
エビル「これだから男は信用がならねえ。俺は傷ついたぞ。
そうだ慰謝料としてこの壷と、あと金目のものはみんなもらってくぞ!」
パナン「あ、別にここにあるものでいいなら、みんなあげるよ。」
エビル「む・・そうか?そんじゃ遠慮なくもらってくな。」

なんかわかんねえが、くれるっていうんだから、遠慮はねえ。
部屋中にある金目のものを集めると、鞄に詰め込んだ。
う〜〜〜ん。こりゃ全部は鞄に入りそうにねえな。

パナン「ねえエビルちゃん?」
エビル「なんだ?」

鞄に詰めていると、ナンパ男に話しかけられた。


パナン「ここにあるものやお金ならたくさんあげるよ。だから・・・」
エビル「だからなんだよ?俺は忙しいんだ。用があるならさっさと言えって!
それよりよ。でっかい鞄もってねえか?俺の鞄じゃ小さくて入りきれないんだ」
パナン「あ・・あ、うん。これなんかどうかな?
ボクの荷物入れなんだけど・・たくさん入ると思うよ」
エビル「お〜〜なかなかよさそうだな。キャスターもついてるしよ。」
パナン「あの・・エビルちゃん。それより大事な話があるんだ」
エビル「あ?なんだ大事な話ってよ?」

あらかた高そうなモンを詰め込んだので話を聞いてやることにした。
大事な話ってなんだよ?
そうか。今度は晩飯にでも誘おうってか?
昼飯であんなに豪華だったからよ、晩飯はもっと期待していいんじゃねえの?

パナン「実は・・・ボクの父上に会って欲しいんだ」
エビル「俺がお前の親父に会うだ?なんで?」
パナン「なんでって・・・」

と、ここでナンパ男は顔を少し赤らめた・・
おい、まさか・・・まさか・・・

パナン「ボクと結婚してくれないかな?」
エビル「な・・・なんだと!?」

・・・け、結婚?
なんで俺が男と結婚しねえといけねえんだ。
いや、俺は今女になってるんだったけ

パナン「会ったばかりで結婚なんて非常識と思うかい?」
エビル「思う」
パナン「でもボクは君に一目惚れしたんだ。好きなんだよエビルちゃん!」
エビル「俺は嫌いだ」
パナン「睡眠薬なんてフェアじゃない・・・それはわかってるんだ。でも・・」
エビル「そうだ。だから俺はお前が嫌いだ。じゃあな。あばよ」
パナン「ボクは今まで君みたいな魅力的な子に会ったことはないんだ。」
エビル「こら。どけよ。俺はもう帰るんだ」


まずいな・・・こいつは本気らしい。
この馬鹿をぶん殴ってからこの場を逃げるとしよう・・
と・・おい。こら・・・
いつの間にかナンパ男は俺に近づいてきている。
手を伸ばせば届く距離。

エビル「俺に近づくんじゃねえ!!」

渾身の力を込めたフックが男のこめかみに命中する・・はずだった。
くそ。よけやがった。なかなかすばやいな。

パナン「女の子がそんな暴力振るっちゃ駄目じゃないか。」
エビル「うるせえ。」

なんども攻撃をするが、すべてよけられた。
別に俺が弱いわけじゃない。女になって力は落ちちゃいるが、攻撃の鋭さは変わってねえはず。
つまりこの男がそれだけ強いってことか?

パナン「ボクはこう見えても、騎士なんだ。剣の腕だってこの国じゃかなうものはいない。」
エビル「だから、女になれってか?金持ちで剣の腕が立つからって自惚れるんじゃねえぞ」
パナン「自惚れてなんかいないさ。必死なんだよ。こんなに女性を好きになったことは今までない。
フェアじゃないやり方ってのも承知の上さ。それだけ君が欲しいんだ。」

ギュッ・・・
俺はこの男に強く抱きしめられた。
くそ!離せ。
だが女の俺の力じゃ振りほどけねえ。
やべえ・・このままじゃホントにこいつの嫁になっちまうぜ
もう駄目だ。そう思って目をつぶったとき

「あらあら・・エビルさんとパナンさんが仲良しになってます♪」

ルユの気の抜けた声が背後から聞こえてきた。

エビル「ルユ!!いいとこに来た。助けろ」
ルユ「助けろって・・なんでですか?せっかく2人とも仲良くなってるのに」
エビル「仲良くなんかなってねえ。襲われてるんだよ」
パナン「な、何をいってるんだ。ボクたちはこんなに仲がいいじゃないか。ハッハッハ」
エビル「ハッハッハじゃねえ!はやく助けろ。ルユ!」
ルユ「つまり・・・パナンさんはエビルさんが好きで、エビルさんはそれがイヤなんですね」
エビル「そうだ。俺は迷惑なんだ。だからなんとかしろ」
ルユ「エビルさんのこと好きになってくれる人なんてそうそういませんよ。
どうですか?パナンさんと結婚してみたら?」
パナン「き、君はなんていいことを言うんだ!!エビルちゃん、お友達もこう言ってるし。結婚しようじゃないか」
エビル「う・・・うわぁぁあああ!!」
ルユ「だってぇ。2人が結婚して、子供ができたら、魔王様と戦うのに貴重な戦力になりますよ。」
エビル「こ・・・子供!?」
パナン「うん!子供を作ろう!やっぱり男の子と女の子一人ずつがいいね!」
ルユ「わぁ〜い。なんて名前にしますかぁ?」
エビル「男は嫌だ男は嫌だ男は嫌だ男は嫌だ男は嫌だ男は嫌だ男は嫌だ男は嫌だ男は嫌だ男は嫌だ・・・ぁぁぁぁあああ!!」
ルユ「なんか壊れちゃいました?せっかく男に戻る薬持ってきたのに。」
エビル「なんだと?はやく渡せ!」

俺はルユからその薬を奪うと飲み干した。(相変わらずナンパ男からは抱きつかれているんだが)
むぉ・・・なんか体の底からから力が湧いてくるような・・
そうか。俺は今もとの体に、男の姿に戻っているんだな。
女の体から、元の力強い肉体へと変化していくのがわかる。

パナン「エビルちゃん好きだぁ〜〜〜〜!!!」
エビル「ば、馬鹿やめろって・・・・ぐぁぁあああああ!!!」

・・・・・俺はこのとき唇を奪われた。男に。

パナン「あ・・はは。ごめん。もしかしてキスするの初めてだったのかな・・・・!?」
エビル「て、てめえ・・・!!」
パナン「だ、誰だ・・てめえ!!俺のエビルちゃんをどこに隠した!?」
エビル「誰が俺のエビルちゃんだぁ?ぶっ殺してやるぜ」

この男の反応からみるにちゃんと俺は男に戻ったようだ。
だが元の体に戻れた嬉しさよりも、戻ったとたんに男からキスをされる屈辱感で一杯だった。
この男・・・ぜってェぶっ殺してやるぜ!

俺はすぐに剣を抜き、ナンパ男を殺すべく踊りかかった。
男に戻った俺は女のときみてえに弱くねえ。
俺様の唇を奪いやがって。


パナン「なんかわからんが・・・俺は女には優しいが、男にはとことん非情になれるフェミニストなんだ。
かかってきやがれ。男は斬る!!」

スラリと男も剣を抜き放ち、俺の攻撃をかわす。
俺とナンパ男は激しい戦いを始めた。



ルユ「どうでもいいけどいい加減冒険はじめて欲しいなぁ・・」
ぽつりとルユがつぶやきが聞こえた。

け!俺もなぁ。勇者らしく冒険して女からモテまくりてえ。
でもなぁ・・冒険の前からこんな不幸続きじゃやってられるか!
勇者らしく尊敬されたりしてえよ。
もっとも元の姿に戻った以上魔王を倒そうなんぞみじんも思っちゃいないがな。
本気で魔王退治してほしいならハーレムくらい用意しやがれ!!!








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