勇者エビル8






ここは魔王の居城。大きな部屋で、一人のフードを被った男が泣き崩れていた。
そんな男の側には、彼がもっとも信頼する部下が立っていた。

魔王「おーいおいおい・・おーいおいおい・・」
魔王の部下A(以下部下A)「魔王様、何をそんなにお嘆きですか?」
魔王「これが嘆かずにおれるか?勇者だよ。勇者のことで私は嘆いておるのだ。」
部下A「勇者殿ですか?おお・・・もしかして伝説の勇者殿が現れたのですな?」
魔王「うむ。。確かに伝説の勇者が今の世の中におる・・だが・・」
部下A「すばらしい!!これで人間界侵攻ができますな!?」
魔王「それが問題なのだ。」
部下A「というと?」

コンコン・・・
突然、ノックの音が響く。
魔王「誰だ?」
大臣「は!大臣です。勇者エビル殿をお連れしました。」
魔王「そうか・・・ごくろうであったな。鍵は開いている。入れ」
大臣「はっ!ではエビル殿、部屋の中へどうぞ」

大臣、彼は魔王の側近を務めている上級魔族である。
彼は魔王からの命令で、勇者を連れてきていたのだ。

エビル「おー。魔王じゃねえか?久しぶりだな。」
魔王「うむ。勇者か・・久しいな」
部下A「貴殿が、勇者エビル殿ですか?お目にかかれて光栄です。私は魔王様の親衛隊を務めるものです。」
エビル「おう。よろしくな! ところで魔王よ、おめえ目が赤いぞ!?」
魔王「こ、これは・・・その・・・ただの寝不足だ。ま、魔王の仕事は楽ではないのだ」

さすがに泣いていたとは、恥ずかしくて言えない魔王。
そんな彼を見て、エビルはニヤリと笑う。

エビル「ほー・・・なるほど、魔王、てめえさっきまで泣いてたろ?」
魔王「な、何を馬鹿な!?」
エビル「ぐはは。そのリアクションを見るところ、図星だな!情けねえ、魔王がめそめそ泣いてんじゃねえよ。」
魔王「むむむ・・・」
エビル「なぁ、もう一度泣いてみろよ?大きな声でな。」
大臣「勇者殿!!魔王様がお泣きになっていたのは、そもそもあなたが原因なんですそ!!いつまでたっても冒険を始めないから・・」
魔王「ば、馬鹿もん!泣いてなどおらん。泣いてなどおらんぞ!!!」
エビル「ぐはははははは!!!ホントに泣いてたのか!?そんじゃ遠慮なく泣け!」
魔王「き、貴様・・・この私を愚弄しおって・・・」
エビル「なんだ?やるのか・・・いいぜ、かかってこいよ。
知ってるだろうが、勇者であるこの俺様のおかげでてめえらクソ魔族どもは人間界侵攻ができるんだぜ?俺を倒せるか!?あぁん?」
魔王「くっ・・・・!!」
エビル「へへへ、ま、弱いもの虐めはこれくらいで終わらせてやるよ。ところでな、俺、冒険してもいいかと思ってるんだが。」
魔王「な、何だと?それは本当か!?」
大臣「おお!勇者殿!本当ですか?」
エビル「おう、本当だ。だがな困ったことがある。旅の準備に必要な金がねえんだ。」
魔王「それくらいの金すぐに手配させよう。安心したぞ、お主がマジメに勇者として取り込もうとしてるのを知ってな」
エビル「たしかに、最初は何で俺が勇者だと疑問に思ったが・・・だが今じゃ伝説の勇者に選らばれたことを誇りに思ってるぞ」
大臣「すばらしい!」
部下A「さすが勇者殿です!」
魔王「それでは、まずは、この私の剣をやろう。稀代の名刀だぞ?きっとお主の冒険に役立つであろう」

魔王はそういうと、壁に掛かっていた一本の剣をエビルに渡した。
その剣は、魔王が大切にしていただけあって、すばらしいものだった。
豪華な鞘、剣の鍔には大きな宝石が輝いている。

エビル「あとは、金だ。冒険するには金がかかってくるからよ」
魔王「そうだな。いくらほど用意しようか・・・?」
エビル「金貨500枚ほど準備してくれ」
魔王「500枚だと?そんなに必要なのか!?それだけあれば一生遊んで暮らしたって余る金額だぞ」
エビル「うるせえな、俺はゴージャスな冒険をしてえんだよ。イヤだっていうならもう冒険しねえぞ!?」
魔王「わ、分かった。準備させよう」

こうして、魔王から冒険の軍資金を手に入れた勇者エビル・・・
ようやく彼の冒険が始まろうとしていた・・・・

そして、冒険への決意から1週間が経過した。
豪華なホテルの一室に勇者はいた。高そうなお酒を浴びるように飲んでいる。

エビル「ひゃひゃひゃ。こんだけ金があればよ、毎日遊んで暮らせるぜ!だ〜れが冒険などするか。ヒック!」
パナン「お〜!エビル。上手そうな酒飲んでるな。俺にも飲ませろよ。」
エビル「パナンか。この酒はうめえぞ!飲め飲め」
パナン「はっはっは。いや〜毎日、酒を飲んで遊んで暮らせるなんてよ、勇者パーティーばんざいだぜ」
エビル「ワハハ。俺に感謝しろよ。勇者エビル様によぉ〜〜」

彼の冒険が始まろうとしていた。



魔王「あの、いい加減、冒険してください・・・」










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