イクラ殺害計画(下)





俺は一目散に逃げた。
「待ちなさい!なんて悪ガキなのーー!?」
という女の声が後ろから聞こえる。
ちぃ。なんて足の速いババアだ。
なかなか振り切ることができねえ。
俺は必死で逃げた。
捕まったら今までの俺の人生は台無しだからな。
といってもまだ3年しか生きてねえけどよ。
1時間ほど逃げていると、
どうやら諦めたらしく、追いかけてこなくなった。

しつこかったぜ。
普通1時間も追ってくるかよ!?
その辺の見ず知らずのガキが埋められてただけだぜ。
いやいや
ババアは暇だからな。
遊び相手が欲しかったんだろう。
しっかし、疲れたな。


でもよ、俺が殺人しようとしたことはバレてねえだろ?
それにあいつは言葉を話せねえからな。
俺のしたことをタイコやサザエに密告するなんてことはできやしなねえんだ。
ざまあみやがれイクラ!
あいつが言葉を話せたらと考えたら恐ろしいが・・・
日本語を覚えることなど永遠にないだろう。
俺が思うに、あいつは言語障害だ。



おっと、いつのまにか自宅に到着したようだ。
しっかし・・相変わらずカビくせえ家だな。
俺はこの家が大嫌いだ。
といっても生活するうえでこの家は必要だ。

大人になってこの家を出て行くときには、
火でもつけてやろうと思ってるがな。

「タラちゃーん。おやつよー」
お袋のキンキン声が居間から聞こえてくる。
うるせえな。
今イクラ殺しの計画考えてるんだから放っておいてくれ!
だが、

「はーい。今行くでちゅー」
俺は素直なよい子らしく答えた。
お袋のサザエには、今までどおりよい子のタラちゃんを演じた方が得策だ。
なんでって?
考えるまでもねえよ。いつもお袋のバッグから小銭をくすねてるからな。
でもっていつもその責任をかぶるのは決まってカツオ。
カツオってよ。
お調子者で間が抜けてるんだよな。
いや、普通はお調子者っていうのはみんな間が抜けてるのかもしれないが。

そんでよ、いつも俺の尻拭いさせられてんの。
だからよ、何かあったら まっさきに疑われるのがあいつ。
ギャハハハ!!ざまあねえぜ。
なんつーの?
日頃の行いがいいとよ、絶対に疑われねーから。

なんか人の不幸ってぶっちゃけ楽しいよな。
俺もカツオがどんどん不幸になるのを見ると楽しくて仕方がない。
だけど、最近はそうもいってられなくなった。
昨日の朝なんだけどな。
アイツが円形脱毛症になってるのを発見しちまった。
元々坊主頭だから、よく見ねえと分からねえが。。
よっぽどのストレスを抱えてるんだろう。
かわいそうなこった。ああはなりたくねえぜ。
なんせ父親がハゲてるし、遺伝的にもハゲになるのは時間の問題だ。
いや、このままストレスを抱えてたら若ハゲになるに決まっているだろう。
カツオ、かわいそうな奴だ。
アーメン。

おまけに3日前にクラスメイトのカオリって女にフラれたらしい。
想像しただけでもすげえストレスだよな?
もっと追い詰めて、カツオが不幸に堕ちてくところも見てみたいが。
いやいや、これ以上プレッシャーを与えたら自殺するかもしれん。
俺には関係ねえけど、カツオが死んじまったら、濡れ衣を着せる相手を失っちまう。
というわけで、俺は暖かい目で見守っている。
俺みたいに優しい幼児はいねえぜ。ホント。
もうリカが俺に惚れるのも時間の問題だな。
いやいやあいつは元々俺に惚れてるに決まってる。

「タラちゃーん。オヤツよー。どこにいるのー?」
お袋の声がまた聞こえてくる。
仕方ねえ。オヤツでも食うか。
まさかまたケーキじゃねえよな?

俺は居間に向かった。
そこにはカツオ、ワカメがおやつを食べていた。
どうやらプリンらしい。
ケーキではなかったが・・・・・
俺プリンも嫌いなんだよな。
俺ビール党だからよー。甘いの苦手なんだよ。
「さぁ。タラちゃんの大好きなプリンよ。召し上がれ。」
お袋は笑顔で言った。

プリンだぁ?
いらねえよ。だけど、さっき運動したし、腹は空いてるからな。
嫌いなモンでも抵抗なく食えるかもしれねえ。
腹が減ってれば何食っても上手いとか、よく言うだろ。
そんじゃ食うか。モグモグ。
ぐはっ!!吐き気がくるぜ。
甘すぎるんだよ!
まじー!んなまずいモン食えるかよ。

「どう美味しい?」
お袋は聞いてくる。
「はい。とっても美味しいでちゅー」
精一杯の作り笑顔をしながら俺は答えた。
今すぐ口のなかのプリン吐き出してえよ。
「こんな甘ったるいもん食えるかってんだ!」
そう言ってお袋をぶん殴ってやりてえ。
けどそれはさすがに出来ねえ。
だって俺はよい子のタラちゃんで通ってるから。
我慢我慢。


あー早くイクラ殺りてー!
くそ!!
何もかもうぜー!
うぜーうぜーー!!
ぜーんぶイクラのせいだ。
そうだ。俺が女にモテねーのも
つまらねえ幼児番組を見せられるのも
今日の朝トイレで紙がなかったのも
みーんなあいつのせいだ。
イライラすんぜ。
覚えてろよ。次に会うときがイクラ、てめえの命日だ


「タラちゃん。プリンもう一個食べるー?」
ニコニコしながらお袋は言いやがった。
もう一個だと?こんなまずいもんこれ以上食えるかーーー!!
それに人が考え事してるときにそんなつまらねーこと言うんじゃねえよ。
何を考えてたか忘れちまうじゃねえか。
って俺はボケ老人かよ!?


「は、はい。欲しいでちゅ。僕プリン大好きでちゅー♪」
だけどよい子の俺はついこう言ってしまった。
お袋は台所から生クリームのたっぷり塗りたくったプリンを持ってきやがった。
ガァーーン!!!
おいこら!
たしかに言葉では欲しいと言ったけどよ。
もういらねえんだよ。
日本人なら阿吽の呼吸とか
以心伝心とかあるだろ?
理解しろよ。てめえ本当に俺の母親か!

くそったれ!
これなら
そうだ。秋刀魚の缶詰があるだろ?
それとビールで口直しがしてーよ。

生クリームもプリンもお袋もイクラも・・・みんな大嫌いだぁぁぁぁぁぁぁ!!!
俺の心の叫びが絶叫する。
ちくしょー!来週あたりストレスで倒れそうだ。
いや冗談じゃなくって。
幼児も楽じゃないぜ











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