磯野家の暗黒時代3(完)







・・・前回のお話より6年の月日が流れた・・・

東京の田園調布に大きな屋敷が立っていた。
屋敷の中では天才が住んでいた。
絵画の世界では彼を知らない人間はいない。
彼の名前は波野イクラ
弱冠16歳の少年である。
彼は公園で出会った1人の画商に才能を見出され、
画家として成功を収めていた。


イクラはこの日も日課の散歩をしていた。
いつものように歩いていると。

「イクラか!?」
誰かから呼びとめられる。
刈り上げ頭の18歳くらいの少年がそこには立っていた。

「おれだよ。タラオ!フグタ タラオだよ」
少年の名前は幼馴じみのタラオであった。


「いやぁ。イクラ久しぶりだな〜」
親しげに話しかけてくるタラオ。
イクラはニヤニヤと馬鹿にした顔でタラオを見る。
しかし、タラオは愛想笑いをしながら話を続ける。

「ニュースで知ったよ。お前すげえ画家になったんだってな。」
媚びるように話しかけてくるタラオを無視して、イクラは歩きだす。
だが、タラオはまとわりつくようにイクラについてくる
そして「久しぶりだ」とか「元気してたか」と話しを続ける。

しばらくタラオを無視して歩いていたイクラもピタリと立ち止まると、
突然財布を取りだし、中から100万円はあろうかという札束を出した。

「ひ、ひぃ〜〜〜!か、金だ・・・こんなにたくさん・・・!!!!!」
ゴクとタラオは唾をのみこみ、目を点にした。

パァンパァン!!

突然イクラは札束でタラオを叩いた。
相変わらずニヤニヤとしたうすら笑いを浮かべながら。

「た、叩いてください。私はあなた様の奴隷でございます」
タラオはそういうと、コロンとお腹を上にして横になる。
つまり、犬が降参するときのポーズである

ニヤリとイクラは笑うと、容赦なくストンピングを浴びせた。
「い、痛い!」
「バブーバブー」
悪魔のような邪悪な笑みを浮かべながらイクラは蹴り続けた。
何度も何度も・・・・
そしてタラオが気絶すると、水を浴びせ、また蹴り続けた。


「イクラさま満足されたでしょうか?」
虚ろな目をしながらタラオがそう言うと、イクラは天使のような笑顔でうなづく。

「で、では、この奴隷タラオめにさきほどの100万円を恵んでくれませんか?」
土下座をしてタラオは頼みこんだ。

イクラはうんうんと、うなづくと、100万円の札束をタラオに手渡そうとする。
タラオの目がキラキラと輝く。
だが、イクラはそれほど甘くはなかった。

すっと札束にライターで火をつけ燃やし出したのだ。

「あぁ〜〜〜〜!!!100万円がァァ!?」
タラオは驚く。
「残念でした♪」という馬鹿にした顔をするとイクラは笑い転げる。

「お、俺をさんざんオモチャにしときながら・・・
てめえには、てめえには明日を生きる資格はねえ!」

怒ったタラオは懐から包丁を取り出すと、イクラに襲いかかった。
しかしイクラはニヤと笑いながら。
懐からまた100万円を取り出した。
すぐにタラオは包丁をしまうと、

「あ、イクラ様、お靴が汚れておりまする。」
卑屈で情けない声を出しながらキュキュとイクラの靴を拭き出す。

えへらえへらと、媚びた笑いを浮かべながら、靴を磨くタラオ。
「えへへ。とってもお綺麗になりました。」
イクラの靴から汚れがとれ、綺麗になった。





こうしてタラオは奴隷となったものの。
とにかく、イクラの命令はハードであった。
バンジージャンプをしろと命令され、途中でロープを切ったり、
気絶するまでムチで叩かれたり、とにかく命懸けであった。
だから、ある日、タラオは絶えられなくなり、逃げ出した。



タラオが去ってから、数ヶ月経過した頃、イクラは人生を変える2度目の出会いをした。
一度目の出会いでは、画家として大成するキッカケとなった。
だが、今回の出会いは、そうではない。
イクラのこれまでうまく行っていた人生の道を狂わせる出会い。
そう悪女との再会であった。

その悪女とは、リカのことである。
リカは20歳の年齢で銀座の高級クラブでナンバーワンをしていた。
これまで恋愛初心者のイクラはすぐにリカに飲めり込んだ。
だが・・・とにかくリカは金のかかる女であった。
イクラはリカのために多額のお金を貢いだ。
最初はブランド物から始まり、自動車、マンション、別荘と・・・
リカの気をひくため、イクラは貢いだ。

リカ「イクラちゃん。私ね経済力のある男が好きなの。
だからスイス銀行にある私の口座に3億入金して欲しいな♪」

イクラ「ハーイ」
イクラはすぐに銀行へ行き入金の手続きを済ませた。

こうしてイクラはリカの為に貢いで貢いで貢ぎまくった。
結果、大金持ちであったイクラの財産も尽きてきた。
田園調布に立てていた豪邸も売ってしまい、
現在は安いアパートで細々と暮らす生活・・・・
今日もまたリカに会いに高級クラブに、通うイクラ。
いつものように店の中に入ろうとすると、
キキーと、真っ赤なフェラーリが店の前に止まる。
リカに貢いだ、フェラーリだ。
つまりリカが出勤してきたのだ。
イクラはパッと隠れだした。
リカをビックリさせてやろうというイタズラ心からだ。

だが、ビックリしたのはイクラであった。

ガチャとフェラーリの中からリカが出てくる。
「じゃあね、ダーリン。今日もあなたのために働いてくるわ」
リカはそう言うと、運転席に座っていた若い男にキスをする。

イクラはショックだった。自分が何十億と貢いできたのに。
リカには男がいたのだ。
だが、ショックなのはこれだけではない。
運転席に座っていた男。
それは・・・・・・・


タラオだった。

タラオは隠れているイクラを見つけると、
ニヤニヤとした笑いをし、またリカとキスをする。

「よぉ。リカ、俺を愛してるか?」
「もちろんよ。タラちゃん。世界中で一番愛してるわ。リカはそのために今日もイクラを貢がせるわね」
「よしよし、リカのゼニは俺のものだ。なぁ、リカ?」
「うん。私、タラちゃんのためなら何でもするし」


こうして、リカに裏切られたイクラは人を信じる事が出来なくなり、
その場を去って行った。

それから半年間、イクラは ひきこもった。
もうこの間、誰とも会話をしていない。
食事はいつもピザを頼んだり、コンビニに買いに行くていど。
彼はもう人を信じられなくなっていた。
毎日、家でゲームをしたり、インターネットをして時間を潰した。

ピンポーン

突然ドアチャイムが響く。
誰だろう?ピザの配達、通信販売以外でチャイムが鳴る事はめったにない。
不思議に思って、ドアを開けるイクラ。



ドアの向こうには、フネが立っていた。

「イクラちゃん。聞いたわよ。人間不信になって、ひきこもったんだってね」
「バブー」

「実はね、イクラちゃんにピッタリのいい所見つけたのよ」
そう言ってフネは手を前に振った。おばちゃんがよくやる仕草だ。

イクラが不思議そうな顔をしていると、フネはどんどん話しをつづける。

「ちょっといい宗教見つけたのよ。きっとイクラちゃんを救済してくれるわよ。」


救済・・・これ以上深入りしない方が
よさそうだ。
精神的におかしくなっているイクラでも怪しいと感じ取った。
だが、フネは気にせず、話を進める。


「あぐらかいてジャンプするとか、50℃のお湯に無理やり入る修行をするのよ」
「バブーバブー!」
遠慮するよというジスチャーをするイクラだが

「一緒にやりましょうよぉ。一時期、社会に抹殺されかけたけど、最近また盛り返してきたから
危険な発言で説得をしようとするフネ。
しかし、イクラは断り続ける。

するとフネは不意をついて、スタンガンでイクラに攻撃を開始した。

「バ、バブー!?」
強烈な一撃をくらい、その場に気絶した。

「さ、みんな、イクラちゃんを教祖様の元へ連れて行くんだよ。」
フネがパチンと指を鳴らすと、数人の男たちが出てきて、イクラをワゴン車に運び出した。

「ゲハヒハ!これで私は救済されるわ。」
フネは満足気にそう言うと、ワゴン車に乗り、信者達が集まる集団生活の場へ向かった。


このころタラオはリカに捨てられ、浮浪者になっていた。


ー完ー








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